恥ずかしい話し

その日は夕方から雨になるので傘を持ってお出かけくたさいと、
zipのお天気お姉さんが言ってくれていた。
まぁ夕方なら会社に 置き傘があるからいいやと思いそのまま家を出て電車に乗ったのだった。
そして一駅過ぎたところで、反対側の扉を見たら、
ポツンと一本のセブンイレブン製のビニール傘が置き忘れられていたのであった。
あらあら誰か忘れて行っちゃったんだと、気にもしていなかったのだが、
私が乗り換え駅で降りるときも、
まだその傘はポツンと私の横にあったのであった。
そうそういい忘れていたが、私は途中混んで来たので、降りやすいように傘のある方の扉側に移動したのである。
そしてその時にふと、この傘を貰っていこう、どうせ忘れ去られているんだし、使ってあげようと思ってしまったのだ。
そして傘を持って乗り換えて最寄り駅で降りて歩いていると、
「あの〜その傘私の傘じゃないかと」
と、今さら後ろから声をかけてくる人が、
えー、あり得ないだろう、ここでかよ、じゃあ今までずっとわざとあそこに置いておいて、乗り換えするときも、今ここで降りたときも、ずっと俺見張られて、このビニール傘を運ばされてたの？
でも、最初はあまりに理解できない状況だったので、違います。と言ってしまったのだが、
思い返して私とは反対側の出口に向かうその人を追いかけて、乗っていた電車のことなどを聞いてみると、疑う余地もなくその人の傘なのであった。
あぁ今思い返しても恥ずかしいというか、複雑な気持ちである。
そもそも私とその傘は、多分一瞬で気持ちが通じてしまったのだと思う。
確かに傘の持ち主は別の人であったが、
あの傘は私に連れ去って欲しかったのだと思う。